December 24122015

 冬の蚊のさびしさ大工ヨゼフほど

                           池田澄子

日はクリスマスイブ。家がカトリックだったので小さいころから夜中のミサに出かけるのが常だった。ツリーやプレゼントで浮き立っている街をよそ眼にひたすら地味なクリスマスを過ごした。聖家族の中でもマリアやキリストに比して話題にのぼらないのが大工ヨゼフ。飼葉桶に眠る赤子のイエスに跪いてマリアと共に見守る以外聖書の中でも出番がない、現在の父親並みの影の薄さである。セーターの上から人を刺しても満腹になるとは思えず寄る辺のない冬の蚊と聖家族の中に居づらい様子の大工ヨゼフのさびしさ。こんなことをよく思いつくなぁ、クリスマスがあっても聖家族を思うことすら少ない世の中で。『拝復』(2011)所収。(三宅やよい)




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