November 15112015

 花嫁を見上げて七五三の子よ

                           大串 章

んな句評があります。「着飾った子どもを連れて、神社に参詣に出かけた。親の目からすれば、当然この日の主役はわが子なのだが、子どもにしてみれば主役の意識などはいささかもない。したがって、折しも神社で結婚式という花嫁を見かけた途端に、子どもは口あんぐりと花嫁姿に見惚れてしまったというわけだ。お前だって主役なんだよ。そう言いたい気持ちもあるけれど、親としてはただ苦笑しているしかないという場面である。主役意識のない七五三の子どもの句は多いが、着飾った者同士の対比から 描いた句は珍しい。」講談社『新日本大歳時記 冬』(1999)所載で、清水哲男の署名があります。句も評も見事なので七五三の今日、紹介させていただきました。十一月は秋の結婚シーズンでもあるので、掲句のような微笑ましい光景は、どこかの神社で見られそうです。この子どもは、男の子でも女の子でもありうるでしょう。けれども、花婿ではなく、花嫁に視線が集まるのが世の常で、老若男女みな然りです。あらためて、結婚式の主役は花嫁なんですね。花嫁がみんなの視線を持って行く。他に「タクシーに顔がいっぱい七五三」(青山丈)があり、祖父母も交えた三世代が揃って、孫を膝に乗せている姿です。子どもが主役のハレの日は、おだやかな小春日和が似合います。(小笠原高志)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます