November 10112015

 木の化石木の葉の化石冬あたたか

                           茨木和生

竜や昆虫以外にも化石はある。木にも木の葉にも、時代を超えて化石となって残っているものがある。思わぬタイミングで残ってしまったものの悲しみを冬の始めのあたたかな日差しが包む。それはまるで、生まれたての赤ちゃんを包むおくるみのように、やわらかで清潔な太陽のぬくもり。長い時間をさかのぼり、化石が木であり、青葉だった時代にも、同じように太陽は頭上に輝いていた。その頃の木はなにを見てきたのだろうか。山は盛大に噴火を繰り返し、見慣れない鳥が枝に羽を休めていたのだろうか。それぞれの時間がそれぞれのなかでゆっくりと流れていく。『真鳥』(2015)所収。(土肥あき子)




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