October 24 2015
わが影と酌みゐる雨の十三夜
大野崇文
週初めの帰り道、空を見上げると薄い月がひらりと浮いていた。日が落ちるとぐっと冷え込むこのところだがそう言えば明日は十三夜、南中時刻は午後十時少し前だという。十三夜はそれだけで風情があり、雨の十三夜となればいっそうもの淋しいはずだが、掲出句を読むと淋しさというより、ゆっくりと一人酒を酌みながら深まる秋の夜を楽しむ作者が見えてくる。雨の向こう側の少し欠けた月に自分自身の姿を重ねたりもしながら、そこには優しい時間が流れている。他に〈塗椀の手にひたと添ひ後の月〉〈 しづかなる水のこころに後の月〉。「月が遊んでくれているような思いもある」(句集あとがきより)という作者の月への思いは静かで、深い。『遊月抄』(2008)所収。(今井肖子)
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