October 022015
稲雀いつもその地の明るさに
高橋豊三
稲雀(いなすずめ)は秋の稲田に飛来してくる雀のこと。稲が実る頃群れをなして啄みにやってくるので農家にとっては頭痛の種となる。空は秋晴れで風になびく黄金の稲穂が眩しい。飽食の時を得て喜びに満ちて雀の群れが飛廻っている。そう言えば案山子や鳴子に反射テープや巨大な目玉のボールにと農家工夫の力作も見物である。一年の計り知れない労働やそうした工夫を思う事無く、いつものように雀がピーチクチュンチュク底ぬけに明るく騒ぎまくっている。黄金の稲穂の眩しさの傍らで明るく唄う稲雀。腕組んで佇む農夫もその明るい大地の風景を前に無事な収穫を確信しつつも祈っている。『新版・俳句歳時記』(2001・雄山閣)所載。(藤嶋 務)
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