September 1592015

 ブロンズの少女が弾く木の実かな

                           山本 菫

ず、誰もが木蔭に置かれたブロンズ像を想像する。容赦ない夏の日差しから葉を茂らせ、ブロンズ像の少女を守ってきた大きな木。季節はめぐり、思いを告げるように梢はポツリポツリと木の実をこぼす。固いブロンズにぶつかっては転がっていく木の実が、冷たく思いをはねつけているようにも見えるだろうか。それとも、あどけない少女がどれほど手を差し出して受け止めたいと、ブロンズの身を嘆いていると見るだろうか。たったひとコマの描写のなかに、静があり、動がある。物語が凝縮された作品を前に思いを巡らせ、結末をひもとく幸福な時間もまた、俳句の楽しみのひとつである。〈向日葵を切つて真昼を手中にす〉〈遠雷や柩にこの世覗く窓〉『花果』(2015)所収。(土肥あき子)




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