September 12 2015
芋虫に芋の力のみなぎりて
杉山久子
芋虫といえば丸々と太っているのが特徴だ。手元の歳時記を見ても〈芋虫の一夜の育ち恐ろしき〉(高野素十)〈 芋虫の何憚らず太りたる〉(右城暮石)、そしてあげくに〈 命かけて芋虫憎む女かな〉(高浜虚子)。なにもそこまで嫌がらずともと思うが。しかしこの句を読んであらためて、元来「芋虫」はイモの葉を食べて育つ蛾の幼虫のことだったのだと認識した。大切なイモの葉を食い荒らす害虫として見れば太っていることは忌々しいわけだが、ひとつの生き物、それも育ち盛りの子供としてみれば、まさに生きる力がみなぎっているのだ。芋の力、の一語には文字通りの力と、どこか力の抜けた明るいおもしろさがあって数少ないポジティブな芋虫句となっている。「クプラス」(2015年・第2号)所載。(今井肖子)
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