September 10 2015
広げたる指すみずみに秋の風
守屋明俊
夏のうだるような暑さがひどかったせいか、とりわけ秋の風がありがたく感じられる。秋を知らせる初秋の風をとくに「初秋風」と言うことがあったと山本健吉解説の「大歳時記」にはある。日が衰え、秋風は次第に冷たくなり寂しさも増してくる。秋のあわれさを感じさせる中心に秋風があることは間違えないようだ。まだ暑さが完全に行き過ぎない九月はとりわけ吹き抜ける風に敏感になるころ。広げた五本の指のすみずみにひんやりとした秋の風が通ってゆく、指を吹きとおってゆく風は春風でも寒風でもなく、秋の風でなければならない。単純で当たり前なように思えるけど身体で感じる秋をなかなかこうは表現できない。『守屋明俊句集』(2014)所収。(三宅やよい)
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