September 0592015

 星月夜縄文土器にある指紋

                           矢野玲奈

供の頃屋根の上に寝転がっていつまでも星を見ていた夜、当時言葉は知らなかったがまさにあれが星月夜だった。星は、自分で輝いているもの、そうでないもの、今生きているもの、とっくに消えてしまったもの、とさまざまでありそんな夜は、無数に散りばめられた星という光の不思議な力に満ちていた。月への親しさとは異なり星には、ことに満天の星空には憧れや畏れや様々な感情が湧きおこる。隈なく照らしているようでいて幻想的な星明りのもとにある縄文土器を想像してみると、数千年かそれ以上前のヒトの指の跡がそこにあるという明瞭な真実に、時間というどこか不確かなものが見え隠れして星空への不安と呼応する。そんな美しいだけではない独特の星月夜の詩情がある一句だ。『森を離れて』(2015)所収。(今井肖子)




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