September 042015
早ミサへ急げば鵙の高鳴けり
景山筍吉
敬虔なクリスチャンのある日の一こま。一日世に塗れれば一日教えに背いた反省が募る。昨夜悶々と悩んだ身の汚れを一刻も早く払拭せんと早朝ミサへと急ぐ。ご自身の何人かの娘さんも全員も修院へ送ることとなる。神へ捧げた娘達へ、嫁がせて子を為すという幸せを捨てさせたのではないか。心臓の鼓動の高鳴りに呼応して鵙が耳をつんざく様な鋭い声で鳴いた。彼は中村草田男の奥様にクリスチャンの直子氏を推挙し媒酌を務めた。閑話休題、彼が唯一民間の株式会社の社長をされた時の新入社員が小生であった。「勤め人は毎日会社へ来る事が仕事だよ」「運転手君、暑いから日陰を通って呉れたまえ」の語録が記憶に残っている。筍吉句<熱燗や性相反し相許す><薔薇に雨使徒聖霊に降臨す><修院へ入る娘と仰ぐ天の川>は教徒としての真摯な日常が滲み出ている。万感の思いを込めて成した著作マリア讃歌にはちゃらちゃらした感傷的な場面はない。その「マリア讃歌」(1937)所収。(藤嶋 務)
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