August 2882015

 蕗を負ふ母娘の下山夜鷹鳴く

                           皆吉爽雨

鷹は別名蚊吸鳥といって夜行性で夕刻から活動して飛びながら蚊や蛾などの昆虫を捕食する。その鳴き声はキョッキヨッキョッと忙しく、一種凄みのある鳴き方である。蕗は山では沢や斜面、河川の中洲や川岸、林の際などで多く見られる。郊外でも河川の土手や用水路の周辺に見られ、水が豊富で風があまり強くない土地を好み繁殖する。蕗は山菜として独特の香りがある薹や葉柄、葉を食用とする。蕗の薹は蕾の状態で採取したものを、天ぷらや煮物・味噌汁・蕗味噌に調理して食べられる。一般的には花が咲いた状態で食べる事は避けられるが、細かく刻んで油味噌に絡める「蕗味噌」などには利用可能。山村の女性の労働はきついが辛い山の仕事も日常となれば慣れっことなり、蕗摘みの母と娘のお喋りは尽きない。山の夜は早くて恐い。ほうら夜鷹が忙しく鳴き出した。『合本俳句歳時記』(1974・角川書店)所載。(藤嶋 務)




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