August 2282015

 桔梗の蕾の中は砂嵐

                           冬野 虹

角形の鋭角を見せながらふっくらと閉じている桔梗の蕾。花弁が重なり合って文字通りつぼんでいる多くの他の花の蕾とは違い、桔梗の蕾の中には明らかに空間が存在する。咲けば消えてしまうその閉ざされた空間に、宇宙のような無限を感じるというのならありがちな発想かもしれないが、砂嵐、と言われるとふと立ち止まってしまう。砂嵐でまず頭に浮かんだのはなぜか本物の砂の嵐ではなく、アナログテレビから出ていたいわゆるスノーノイズと呼ばれるものだった。あの無機質でモノクロの世界に続いている単調な雑音にしても、本当の砂嵐の混沌にしても、ぽん、と花が咲いた瞬間に消え去り、そこには凛とした桔梗の姿が生まれるのだ。『冬の虹作品集成』第一巻『雪予報』(2015)所収。(今井肖子)




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