August 1782015

 ビヤガーデン話題貧しき男等よ

                           吉田耕史

はさまざまだなあ。この句を読んだときに、思わずつぶやいてしまった。作者にはまことに失礼な言い方になるが、ビヤガーデンに何か話題を求めて、「男等」は集うものなのだろうか。たしかにビヤホールでの話は、ろくなものじゃないだろう。でも、そのろくなものじゃない話題が、逆にビールの美味さを盛り上げていくのであって、これがろくなものだったら、そんな話はどこか別の場所でやってくれと言いたくなってしまう。岡本眸に「嘘ばかりつく男らとビール飲む」があるが、そうなのだ、貧しき話題に「嘘」がどんどん入り込む。それがあのただ飲むだけの殺風景な場所を輝かすちっぽけな起爆剤のような役割を担っているのでもある。そして男等の束の間の「宴」が終わってしまうと、それこそ嘘のようにあの殺風景なただ飲むだけの場所は霧散してしまう。何事もなく霧の彼方へと消えていくのみである。それで、よいのである。『現代俳句歳時記・夏』(2004・学習研究社)所載。(清水哲男)




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