August 0782015

 山深し語尾しつかりと三光鳥

                           有馬朗人

き声が独特で「ツキ(月)・ヒー(日)・ホシ(星)、ホイホイホイ」と聞こえるので三光鳥と名付けられた。ホイホイホイが馬を追う様にも聞こえ、別に馬追鳥という名もある。一般に鳥類ではオスが目立つ色彩や形態をとるが三光鳥ではくちばしと目の周囲がコバルト色でとても長い尾羽を引いている。夏鳥として東南アジアから日本に渡来してくる。夏休みは海へ山へと出掛けて何時もと違う生活が多くなる。そんないっ時、普段の人間関係から離れて自然に目を遣り耳を貸していると珍しい鳴き声が聞こえてきた。目の先には深い山、佇んでいるとまたしても遠くより「月日星、ホイホイホイ」の語尾ホイホイホイの最後まで聞き取れる澄んだ鳴き声がした。自分がめったに無い非日常の深山幽谷に立っているのだと思うと身が洗われたような気がするのだった。人間たまには非日常に身を置くのも良いものだ。「俳句」(2014年8月号)所載。(藤嶋 務)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます