July 3172015

 老鶯の声つやつやと畑仕事

                           満田春日

の鳴き声は秋のジジッジジッの地鳴きに始まって冬のチャッチャッの笹鳴き、ホーホケキョウの春の囀り、夏の老鶯の鳴き盛りと四季を彩ってゆく。秋冬に山にいたものも、春には公園や庭の藪中や川原のヨシやススキの原などに移ってくるが、鳴き声は聞こえても姿はなかなか確認できない。一説には鶯にも方言があって地方地方での鳴き方には差があるらしい。繁殖相手に競争が少ない地方ではのんびりと鳴き、競争の激しい所では激しく鳴くとも言われている。一般にホーホケキョウは「法、法華経」と聞きなされている。今畑打つ傍らで鳴く鶯の声は恋の一仕事を終えた余裕なのかつやつやと聞こえる。あるいは熟練した人間国宝の様な鳴き技かも知れぬ。夏の萬物の盛るころ、命に懸命に向かうのは鳴きしきる老鶯も畑打つ人間もおなしである。他に<からませし腕の記憶も青葉どき><乳母車上ぐる階段アマリリス><短夜の書架に学研星図鑑>など掲載。俳誌「はるもにあ」(2014年8月号)所載。(藤嶋 務)




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