July 1872015

 パラソルの精一ぱいの陰つくる

                           豊田いし子

ルは太陽、パラソルは太陽から身を守るという意味だといい、日傘の傍題となっているが、この句のパラソルは砂日傘、ビーチパラソルを思わせる。それも、込み合った砂浜にところせましと立ち並んでいるのではなく、広々とした砂浜に一本だけ、少し傾き立っているビーチパラソル。白い砂の上にパラソルが作るくっきりとした八角形は、一面の光の風景の中のただ一つの影であり陰である。決して大きくはないその陰を作るだけのためにそこにあるパラソル、心象風景のような一枚の絵が浮かんでくる。先日、海水浴場の光景をテレビで見たが、砂浜にはパラソルならぬテントが並んでいた。昨今の異常な日差しにはこの方が合理的ではあるが、精一ぱいという健気さはないだろう。『曙』(2015)所収。(今井肖子)




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