July 1172015

 花柘榴雨きらきらと地を濡らさず

                           大野林火

榴の花の赤は他のどの花にもない不思議な色だ。近所に、さほど大きくない柘榴の木が門のすぐ脇に植えられている家がある。今年も筒状の小さい花が、ことさら主張することなくそちこち向きつつ葉陰に咲いていたが、自ずと光って通りがかりの人の目を引いていた。その光る赤を表現したい、と思ったことは何度もあるのだが今ひとつもやもやしたまま過ごしていた時この句を知った。細かい雨の中、柘榴の花が咲いている。きらきら、は柘榴の花そのものが放つ光の色であり、雨は光を溜めて静かに花を包んでいる。その抒情を、地を濡らさず、という言い切った表現が際立たせており、作者の深く観る力に感じ入る。『季寄せ 草木花 夏』(1981・朝日新聞社)所載。(今井肖子)




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