July 08 2015
肩先でジャズ高鳴るや夏の渓
中上哲夫
ジャズと中上哲夫とは切っても切れない仲である。それはある意味で羨ましいことだし、ある意味で不幸なことでもあろう。「夏、丹沢にて」と題して俳句雑誌に発表(1994)された七句のうちの一句である。親しい詩人たちと渓流釣りに行ったときの句だ。すがすがしい渓流に行ってまで、ジャズが現実に彼の心のなかでか高鳴っている、という状態は幸せと言えば幸せ、不幸と言えば不幸なことではないか。「釣りに集中しなさい!」と言ってやりたくなる。(そういう私は釣りはやらないのだが…。)静かな友人や騒々しい友人たちと一緒に渓流で釣糸を垂れている至福のとき(?)。そんなときに高鳴るジャズ。果たしてそんなときの釣果は? 彼の詩集『ジャズ・エイジ』(2012)に「ーーなんでジャズなんかやるの?/ーー自由になれるからよ/サックスを吹いていると/背中に羽根が生えてくるのよ」という素敵なフレーズがある。それを「ーーなんでジャズなんか聴くの?」と置き替えてみよう。きっと「背中」ではなく「肩先にジャズの羽根」が生えてくるのだろう。新刊の現代詩文庫『中上哲夫詩集』(2015)には、掲出句をはじめ64句が収められている。その勇気を素直に讃えよう。(八木忠栄)
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