July 0372015

 消えかけし虹へペンギン歩み寄る

                           金子 敦

ンギンは主に南半球に生息する 海鳥であり、飛ぶことができない。海中では翼を羽ばたかせて泳ぐ。海中を自在に泳ぎ回る様はしばしば「水中を飛ぶ」と形容される。陸上ではよちよちと歩く姿がよく知られているが、氷上や砂浜などでは腹ばいになって滑ったりする。飛ぶことを失った鳥。話は逸れるが、小生の周りにパニック障害に苦しむ者が居る。自分の行動が自分の意のままにならないのだ。勤めに出ようにもそこへ向かう一歩が硬直して踏み出せない。今空へ向かって飛出せないペンギンの姿が重なって見えてくる。真っ白な南極に七色の虹が掛り今消えかかっている。普段見慣れぬ虹に見とれていたペンギンが、もう少し夢の時間を惜しむかのように歩み寄って行った。もしも飛べたなら空へ向かって羽ばたいたろうか。それでもペンギンは消えかけた虹へ向かってよちよちと歩み寄って行くのであった。他に<メビウスの帯の中なる昼寝覚><月の舟の乗船券を渡さるる><白薔薇に吸ひこまれたる雨の音>などあり。『乗船券』(2012)所収。(藤嶋 務)




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