June 282015
この街に生くべく日傘購ひにけり
西村和子
夏がスタートしています。前向きな明るさに、元気をいただきました。作者は横浜育ちのようですが、たぶんご主人の仕事の都合で大阪の暮らしが始まったのでしょう。句集には「上げ潮の香や大阪の夏が来る」「大阪の暑に試さるる思ひかな」があり、そのように推察します。「生くべく」で語調も強く意志を示し、「購(か)ひにけり」で行動をきっぱり切る。動詞を二語、助動詞を三語使用しているところにこの句の能動性が表れています。それにしても「日傘購ひ」は、男にはほとんどない季語の使い方で、いいですね。素敵な日傘を購入したことでしょう。句集では「羅(うすもの)のなよやかに我を通さるる」が続き、大阪の街を白い日傘をさして、女性らしい張りをもって歩く姿を読みとります。『かりそめならず』(1993)所収。(小笠原高志)
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