June 222015
同じ女がいろんな水着を着るチラシ
北大路翼
興ざめである。チラシを見るのが男である場合には、べつに水着のあれこれを比較するわけじゃない。したがって、「なあんだい」ということになる。けれども、かつて広告などの小さなプロダクションで働いた身には、なんとも切ない読後感が残る。要するにモデルを何人も雇う資金的余裕がないので、同じ女性を使いまわすことになってしまう。これが一流のモデルであったら話は別なのだけれど、哀しいかな、声をかけられるモデルの質には限界がある。つまりは貧すれば鈍するとなる理屈で、チラシの製作段階から仕上がりのみじめさが読めてしまうのだから、どうしようもない。この句を読んで、そんな若き日の苦い感情を思い出した。この句の作者には、いわば全焦点レンズで押さえたスナップ写真のような作品が多い。それがしばしば奇妙な味つけとなる。『天使の涎』(2015)所収。(清水哲男)
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