June 192015
海鵜憂し光まみれであるがゆえ
高野ムツオ
鵜は全身光沢のある黒色で、嘴の先がかぎ状になっている。潜水が上手で魚を捕食し水から上がると翼を広げて乾かす習性がある。主に川鵜と海鵜が知られる。川鵜は東京上野の不忍池でよく見られる。海鵜の方は長良川の鵜飼いで有名である。掲句の海鵜はきらきらと光が眩しい岩礁に体を曝して羽を休めているのであろう。波の飛沫の光りの中に黒い体を沈めている。黒い体は黒い闇に抱かれた時心休まる。そんな我身が今白日の下に晒されて、光まみれとなり、ふいと憂鬱に襲われている。他に<わが恋は永久に中古や昼の虫><死際にとっておきたき春の雨><大志なら芋煮を囲み語るべし>など。『満の翅』(2013)所収。(藤嶋 務)
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