June 042015
約束はただのあじさいだったのに
なかはられいこ
紫陽花の花がだいぶ色付いてきた。紫陽花は家の戸口に裏庭に何気なく植えられて雨のしとしと降る時期に花期を迎える。薔薇のような華やかさはないが、親しみやすい普段着の花だ。俳句の季語としての紫陽花は変化する色や生活の一風景として詠まれることが多い。「紫陽花や家居の腕に腕時計」波多野爽波、「紫陽花のあさぎのままの月夜かな」鈴木花蓑。掲載句では約束の内容はわからないが「ただの」という表現に紫陽花の性質が強調されている。庭の紫陽花を切って新聞紙にくるんで持ってくる約束がお金を出してあつらえた豪華な花束を手渡されたのか。読み手は「あじさい」をめぐる「約束」に想像をめぐらすことになる。紫陽花を捉える角度が俳句と川柳では違う。掲載句は川柳、作者は川柳作家。『脱衣場のアリス』(2001)所収。(三宅やよい)
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