May 2852015

 ふぐの子のちちのむやうにくちうごく

                           榎本 享

ぐは猛毒を持つが美味で、その顔を正面からまじまじ見ると目が大きくてユーモラスな表情をしている、句の眼目は大きなふぐでさえ、もごもごと口を動かす様子が愛嬌があるのにそれが赤ちゃんふぐというところだ。「ちちのむように」とその動きを具体化し、全体をひらがな表記の柔らかさが赤ちゃんふぐのいとけなさを表しているようである。日本の近海にはトラフグだけでなく様々な種類のフグがいる。ふぐ料理は冬が本番ではあるが、クサフグなどは6月あたりに集団で波打ち際に押し寄せて産卵をするらしい。無事生まれた赤ちゃんふぐたちは大海で生き抜くべく一生懸命口を動かしながら泳いでいることだろう。『おはやう』(2012)所収。(三宅やよい)




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