May 1452015

 飛行機が大きく見える夏が来る

                           中谷仁美

年の春はぐずぐずと雨が降っていつまでも寒さが残ると思っていたが、四月の下旬から突然夏になった。立夏の前に早々と夏の只中に放り込まれた印象だった。ぼんやりと霞んだような春空の曖昧さとは違い、夏空は輝く群青で、ものの輪郭をくっきりと描き出す。頭上の爆音に空を見上げれば銀色の腹に時折鋭い光をきらめかせながら飛行機がゆっくりと横切ってゆく。夏空をゆく飛行機は他の季節にくらべてひときわ大きく力強い。エネルギーに満ちた夏の訪れは楽しみでもあるが、照りつける日差しと熱気にいたぶられ、うんざりと連日の「晴れ」マークが続く日々でもある。さて、本格的な夏が来るが、今年の夏はどんな夏だろう。『関西俳句なう』(2015)所載。(三宅やよい)




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