May 13 2015
新築の青葉がくれとなりにけり
泉 鏡花
夏である。山と言わず野と言わず、青葉が繁って目にしみるほどにムンムンとしている季節である。植物によって青葉の色彩に微妙なちがいがあるから、さまざまな青葉を味あうことができる。見晴らしのいい場所に少し前に新築された家(あるいは新築中でもよかろう)は、おそらく作者を注目させずにはおかない造りなのだろう。どんな家なのだろう? いずれにせよ、家の新築は見ていても気持ちがいいものだ。鏡花が注目する「新築」とは……読者の想像をいやがうえにもかき立ててやまない。つい先日までは、まるまる見えていたのに、夏らしくなって青葉がうっそうと繁り、せっかくの家を視界から隠してしまった。残念だが、夏だから致し方ない。とは言え、この場合、作者は青葉を恨んでいるわけではない。「やってくれたな!」と口惜しそうに、ニタリとしているのかもしれない。「新築」の姿もさることながら、いきいきと繁ってきた「青葉」もじつはうれしいのである。鏡花には他に「花火遠く木隠(こがくれ)の星見ゆるなり」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)
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