May 0952015

 薔薇咲くや生涯に割る皿の数

                           藤田直子

り乱れる薔薇の花弁から割れた皿の破片を思い浮かべるのと、割れてしまった皿の欠片を見た時そこに薔薇のはなびらが重なって見えるのとでは印象が異なるだろう。割れた皿の欠片からさえ、美しく散る薔薇を連想するという想像力と美意識が、この作者の凛とした句柄には似合っているのかもしれない。しかしまた、広い薔薇園で散り始めた無数ともいえる花弁の色彩やふくよかな香りの中にいながら、ふと硬く尖った陶器の破片が音を立てて散らばった一瞬を思う、というのも捨てがたい。いずれにせよ、生涯に割る、という一つの発見までの時間の経過を共有することで読み手も一歩踏み込むことができ、咲くや、により薔薇はなお生き生きと強い生命力を持ちそれが前を向いて進む作者の姿に重なる。『麗日』(2014)所収。(今井肖子)




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