May 0552015

 乗り継いでバスや都電や子供の日

                           小圷健水

日こどもの日。古来より男児の健全な成長を祝う端午の節句だったが、1948年に「こどもの人格を重んじ、幸福をはかるとともに、母に感謝する日」として国民の祝日となった。掲句は目的地に行く手段というより、乗り物好きの子供へのサービスのように思われる。赤ん坊や子供の乗りもの好きは、絵本や玩具に、あらゆる乗りものグッズが充実していることに表れている。わけても男児にその傾向が強く、プラレールに夢中になり、ミニカーを集め、なかにはすべての電車の名前をそらんじてしまう子もいるほどだ。それは鮮やかな色やかたち、規則的な動きなどに新鮮な刺激を受けていると考えられている。わが子がバスや都電にはずむように乗り込む姿に、父はふと遠い記憶を重ねる。乗りもの好きをさかのぼれば、それは抱っこや肩車から始まっていることに気づき、いっそう愛おしく思われるのだ。句集には〈大皿に向きを揃へて柏餅〉や〈ざつくりと二つに切つて菖蒲風呂〉も。子供の日の香り立つような時間がおだやかに描かれる。『六丁目』(2015)所収。(土肥あき子)




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