May 0252015

 春暑き髪の匂ひや昇降機

                           小泉迂外

ールデンウィーク前に東京は夏日、北海道では十七年ぶりの四月の真夏日だったという。いわゆる、いい季節、が短くなってゆくこの頃、なるほど春暑しか、と思ったが、常用している歳時記には無く見慣れない。そこで周りに聞いてみると、なんか詩的じゃない言葉ね、と言われた。確かに、惜しむはずの春がうっとおしく感じられる気もするし、夏近し、のような色彩も期待感もなくなんとなく汗ばんでいる。しかし、掲出句のエレベーターの中で作者が感じ取った髪の匂いは、夏の汗の臭いのようにむっとするほどでなく、かといって清々しいというわけでもなく、どこか甘く艶めかしい、まさに春暑き日の名残の匂いだったのだろう。何が詩的か、とはまことに難しい。『俳句歳時記』(1957・角川書店)所載。(今井肖子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます