May 0152015

 囀りや野を絢爛と織るごとく

                           小沢昭一

鳥たちは春が来ると冬を越した喜びの歌を一斉に唄う。それぞれの様々な声は明るく和やかである。折しも芽生えた若葉の色彩と相まって野は誠に錦織なす絢爛さを醸しだす。こうした雰囲気に満ちた山野に身を置けばとつぷりと後姿が暮れていたお父さんの心にも春がやって来てしまう。お父さんもまた織り込まれた天然の一部となって「あは」と両手を広げる。本誌では小沢昭一100句としての特集であるが、所属した東京やなぎ句会では俳号を変哲という。他に<父子ありて日光写真の廊下かな><春の夜の迷宮入りの女かな><ステテコや彼にも昭和立志伝>など小沢節が並ぶ。「俳壇」(2013年5月号)所載。(藤嶋 務)




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