April 2842015

 春たけなは卵のなかの血流も

                           秦 夕美

けなわとはものごとのもっとも盛んになった頂点ともいえるとき。春のたけなわは光りに満ちあふれ、万象の命の健やかさに満ちる。卵もまた、ひしめく命そのもの。そこに脈打つ血流も春の高まりとともに今まさに生まれんと息づいている。固い殻と親鳥に守られた卵の世界と比べ、外の世界は危険がいっぱいにも関わらず、小さな命は一刻も早く外に出ようとせっせと育つ。日に日に増す春の深まりとともに、かわいらしい鳴き声ももうすぐ聞こえてくるに違いない。〈うらゝけし一枚たりぬ魔除札〉〈朝川やあうらに春のひしめきて〉『五情』(2015)所収。(土肥あき子)




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