April 1642015

 春塵や毛沢東のブロマイド

                           柳生正名

ロマイド懐かしい言葉だ。簡単に言えば、映画スターや歌手の写真。携帯で写真を何枚でもとれる今と違って、スターが雲の上の人だった時代には貴重なものだったろう。ファンをじっと見つめる視線の置きかたやポーズなど、肖像写真と言われるだけあって照れくさくなるほどカッコつけたものが多いけど、ファンにとっては貴重なものだったろう。時代がかった言葉だけど、今もプロマイドってあるのだろうか。毛沢東と言えば天安門にある毛沢東の肖像画を思う。毛沢東は語録とともに文化大革命の象徴的存在だったけど、現在、彼を信奉する人はどのぐらいいるのだろう。時代がかって色あせた毛沢東のブロマイドにうっすらとつく春の塵。同じく砂塵ではあるが黄沙ではなく、「春塵」としたことで、空間的、時間的な距離が強調されているように思う。『風媒』(2014)所収。(三宅やよい)




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