March 2732015

 黄鳥をあえかな朝に啼かせをり

                           坊城俊樹

鳥は黄色の鳥でコウライウグイスの別名、一般的には鶯のこと。「浮気うぐいす梅をばじらしわざと隣の桃に咲く」古い都々逸ではないがどこか色気を感じる鳥である。そんな鶯が鳴いて、かよわくもなよなよとした気持ちで朝を迎える。昨夜の猛ったもろもろの残滓を抱いて、もう暫くと朝寝を楽しむ。誰にでもある青春への慕情。あの頃へ戻りたい、でも戻れない。句日誌の如くに<ももいろの舌が嘘つく春の朝><ゴールデン街より電線の秋の空><嘘も厭さよならも厭ひぐらしも>など青き円熟の四半世紀を振り返る。『坊城俊樹句集』(2014)所収。(藤嶋 務)




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