March 1332015

 数へてはまた数へけり帰る鴨

                           牧野洋子

に渡ってきた鴨類が春には列をなして帰ってゆく。冬鳥は主として越冬のために日本より北の国から渡ってきて、各池沼に分散して冬を過ごす。冬が終わると再び繁殖のために北の国に帰ってゆく。小さな群れが次第に数を拡大させつつ大群となって帰って行く。さてこの帰る鴨の隊列を空に見るに数えるのはかなり厄介である。目の子で百羽単位で何単位まで数えられるだろうか。まだ水面に散っている時でさえ、どれも同し顔でくるくると泳がれては中々数えにくいものである。とはいえ興に乗ってしまうと数える事を止められない。そんなこんなの季節もやがて移ろってゆく。再び春の気配と共に池沼に羽ばたきを繰り返し、いざ時が来ると飛び立ってゆく。後には留鳥のカルガモが残るのみとなる。他に<郭公やフランスパンの棒立ちに><雁渡る砂漠の砂は瓶の中><冬の雁パンドラの箱開けてみよ>などあり。『句集・蝶の横顔』(2014)所収。(藤嶋 務)




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