March 1232015

 すかんぽと半鐘の村であった

                           酒井弘司

かんぽは野原、土手などに生え「酸葉」「すいすい」等とも呼ばれる。と歳時記にある。写真をじっと見てもどんな植物かわからず、もちろんすかんぽを噛み噛み学校へ行ったこともない。都会暮らしで漫然と日々を過ごしてしまったので植物にまつわる思い出がないのが殺風景でさみしい。さて、掲載句は空を背景に火の見櫓に吊るされた半鐘とすかんぽが主役であるが、それ以外目立ったものが何もない村とも読める。自分のふるさとの村ではあるが、大きな川も自慢できる特産物もない。段々畑にできる作物を細々と収穫して生計をたてているのだろうか。あるものと言えば春先になればいたるところに生い茂るすかんぽと村のどこからでも見える半鐘が記憶に残っているのだろう。日本の山間にある村のほとんどは貧しい。今や過疎化を通り越して無人になる村も多くなり、すかんぽと半鐘だけが取り残されているのかもしれない。『谷戸抄』(2014)所収。(三宅やよい)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます