March 0732015

 卒業の涙はすぐに乾きけり

                           今橋眞理子

年、三月第一週でその年度の授業が終わる。一年間、ほぼ毎日顔を合わせているので卒業式のみならず、どの学年を担当していてもそれなりに一抹の淋しさがあるのだが、この時期になると掲出句が思い出される。作句の年代から見て自らの卒業の印象であり、あんなに泣いたのに、という素直な実感が句となっていていろいろ言う必要もないのだが、こう言い切れる涙はなかなか他にはない。そして送り出す側は、そのまま二度と振り向くことなく思い出すことなく進んで行ってほしい、と願うのだ。あらためて、二十代から確かな感性を磨き続けてきた作者なのだと感じる。『風薫る』(2014)所収。(今井肖子)




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