February 2222015

 共に死ねぬ生心地有り裏見の梅

                           永田耕衣

神大震災に被災した春の句です。耕衣最終の第十六句集『自人』(1995)所収。この句集を制作中の1995年1月17日、震災によって版元の創文社では、活字棚が総崩れとなりました。創文社の岡田巌氏は、急きょ湯川書房を通じて東京の精興社に活版活字を依頼するために上京します。掲句は、「白梅や天没地没虚空没」とともに、精興社が活版印刷をしている途中に補追された句です。同年2月21日、耕衣は『自人』の<後記>を岡田氏に渡します。「ミズカラが人であり、オノズカラ人であることの恐ろしさ、その嬉しさを原始的に如何に言い開くか」。掲句の「生(なま)心地」は造語です。この語を「生身、生意気」に通じる、観念ではない生きものの本情ととります。「裏見の梅」も造語句といっていいでしょう。これは、実際にやってみました。梅の花を正面からではなく、花弁の裏側から見てみました。すると、花をつけている枝が、青空に向かって斜めに伸びていく姿を見ることができます。それは、手のひらではなく手の甲を見る所作であり、人を正面からではなく、後ろ姿を見送る所作に通じます。「裏見の梅」には、震災によって、目に見える物が反転したこと、また、死者の後ろ姿を天に向けて見送る鎮魂が込められているのでしょう。(小笠原高志)




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