February 1722015

 日の涯雪の涯の春動く

                           深谷雄大

にはどちらも「はたて」のルビ。北海道在住の作者にとって、実際の春の訪れはまだずっと先のことながら、だからこそわずかな変化にも敏感なのだと思われる。冬至から確実に日は伸び続け、昼間の長さによって季節の動きを実感する。俳句で使われる「日」には、陽光と一日という時間のどちらとも取れるものだが、掲句では、どこまでも続く地平の涯まで積もった雪の上に投げかけられたたっぷりの日差しが感じられる。「涯」の文字が、はるかかなたではあるが、確かに動いているのだという存在感にもつながっている。一面の雪の上に投げかけられた日差しはまるで春を招く風呂敷のように明るく広がり、北国の春がずっと向こうから一心に手を振っている。〈耳当てて根開きの樹の声を聴く〉〈水の面の雲逆流る春の天〉『寒烈』(2014)所収。(土肥あき子)




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