February 1222015

 春星や紙石鹼も詩もはるか

                           花谷和子

石鹸!懐かしい。私が小学校ぐらいまで紙石鹸ってあった。湿気があるとすぐベタベタになってしまい実用的に見えて実際の用途に耐えるものではなかった。時代はいろんなものを置き去りにしてゆく。紙石鹸、セルロイドの筆箱、薬包紙、昭和30年代に日常的にあって消えてしまったものは多い。青春期に渇望に近い気持ちで読んだ詩も、今はそうした心持ちで向かうことはなくなったのか。春星と詩の取り合わせは甘やかに思えるが、はるか春星への距離と同時に二度と戻れぬ過去への時間的隔たりを「紙石鹸」という具体物で表している。紙石鹸は懐かしいが今の自分とはかかわりのないもの。あれほど繰り返し読んだ詩も今の自分からは遠い。時代は変わり人の心も変わる。失ったからこそ、郷愁はかきたてられるのだろう。『歌時計』(2013)所収。(三宅やよい)




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