February 0522015

 複写機のまばゆさ魚は氷にのぼり

                           鴇田智哉

ピー機でコピーをとることは職場ではありふれた日常業務の一つに過ぎない。そこには季節感も俳句に繋がりそうなものは一見なさそうに思えるが、蓋を閉めないでコピーをとると眩い光の棒が紙を押さえる手の下を横切ってゆく。その一瞬を捉えた掲句は、日差しを受けてキラキラ光る氷とその上で跳ねる魚の像を確かな手応えをもって引きだしてくれる。「魚氷にのぼる」の季語が由来する自然事象を目の当たりにする機会はほとんどないが、この句のリアルさは複写機の光と氷を輝かす早春の光の共通項にある。それを受けて歳時記のインデックスから引き出された季語も生動するわけで、ルーチンワークになっている日常を丁寧に見直し想像力を広げれば俳句の可能性もまだまだ広がりそうである。『凧と円柱』(2014)所収。(三宅やよい)




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