January 3112015

 大試験指切れさうな紙で来る

                           谷岡健彦

度か書いているが、大試験は本来三月の進級試験、卒業試験のことを表す言葉。しかしどうしても、一月から二月にかけての入学試験シーズンになると、大試験の句に目が行ってしまう。それは学校に勤めているからか、自らの入学試験の失敗が未だに思い出されるからか、その両方なのか。掲出句は、来る、の一語に臨場感があり、受験生の視点で作ることで試験会場全体に漲る緊張感が見える。受験生に、出題者の意図を見抜け、などと言うことがあるが、入学試験は紙一枚の上で繰り広げられる、作問するものとそれを解くものの一発勝負なのだ。東京の私立中学入学試験の多くは明日から三日間。他に<木枯の向かうにわが名呼ぶ声す><若書きの詩の燃え立つ焚火かな>。『若書き』(2014)所収。(今井肖子)




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