January 2312015

 冬夕焼鴉の開く嘴の間も

                           小久保佳世子

っ赤な夕焼けが真っ黒な鴉の嘴の間から見えたという。夕焼けと言えば夏場の季語だが冬の夕焼けも心細くなるほど感傷的に美しい。寒中の夕焼けはその短さゆえいっそう心に沁みてくる。鴉の成鳥は口の中も黒い。その開いた暗黒へ赤い夕陽が射している。ここにも一つの夕陽の美あり、人それぞれに小さな発見をし感心するものある。それがその人のアングルというものであろう。因みに鴉にはざっくり言って嘴の太いハシブトガラスと細ハシボソガラスが居るが、ここはハシブトカラスとみておこう。他に<涅槃図へ地下のA6出口より><アングルを変へても墓と菜の花と><人間を信じて冬を静かな象>などあり。『アングル』(2010)所収。(藤嶋 務)




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