January 1712015

 寒いからみんなが凛々しかりにけり

                           後藤比奈夫

かに、暑さにたるみ切った姿より寒さに立ち向かう姿の方がきりりと引き締まっている。それにしても前半の口語調と後半の、かりにけり、とのアンバランスが得も言われぬ印象を与える掲出句だが、既刊十句集から三百八十句を選って纏められた句集『心の花』(2006)の中にあった。そしてこの二句後に<一月十七日思ひても思ひても >。作者は神戸在住。思えば寒中、寒さの最も厳しい時に起こった阪神淡路大震災である。寒さは何年経ってもその時を思い出させるのかもしれないが、この句の肉声にも似た口語調と、凛々しかりにけり、にこめられた深く強い思いに励まされるような気がしてくる、二十年目の今日である。(今井肖子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます