January 1312015

 鮟鱇や大事なところから食べる

                           水上孤城

見からするとどう見ても美味とはほど遠い鮟鱇ではあるが、実は捨てるところなど全くないといわれるほどおいしい魚である。七つ道具とは、なくてはならない七種類のものをいうが、鮟鱇はこれ全身が美味の七つ道具。「肝」「ぬの(卵巣)」「ひれ」「えら」「皮」「水袋(胃)」「身」でしめて七つ。全体の80%が水分でさばきにくいことから、口にフックを掛けて吊し切りをするが、この七つ道具が外されると、残るは骨と口だけという心細い姿となる。掲句のいうもっとも大事な場所とはどこかと考えると、ものごとの重要を意味する「肝」に違いないと思われ、たしかにもっとも先に箸を付けたい場所だと得心する。しかし、大事な箇所ばかりを肥大させられるガチョウの不運を思うと、おいしくなりすぎるのも危険なことなんだよ、ともつぶやきたくもなるのである。『水の歌』(2010)所収。(土肥あき子)




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