December 26122014

 正月は留守にする家鶲来る

                           小川軽舟

月の留守は実家への帰郷とか連休利用の旅行など普段の生活拠点を離れる事が多くなる。十月を過ぎる頃にはそんな正月の予定をあれこれ立てる。ふいと「ヒッヒッ」と火打石を打つ音に似た鳥の鳴き声が聞えた。尉鶲(ジョウビタキ)である。例年通り渡来し例年通りわが家の庭木に止まった。そんな律義さがこの鳥にはある。オスは赤褐色の腹部や尾が鮮やかで翼の黒褐色とそこにある白い斑点がしゃれている。よく目に留まる高さに飛びまわるので目につきやすい。今年もやって来たなと安心しつつも人は自らの旅の準備に思いをはせる。旅は良い、心細くなるような冬の旅が良いと飽食の都会生活にこころ腐らせた身には思えるのである。他に<初冬や鼻にぬけたる薄荷飴><しぐるるや近所の人ではやる店><綿虫のあたりきのふのあるごとし>などあり。「俳句」(2013年2月号)所載。(藤嶋 務)




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