December 12122014

 浮寝鳥同心円を出でざりき

                           柴田奈美

とか鳰とか鴛鴦などは秋に渡来し越冬する。冬の間は湖水、河川、潟や海で餌をあさり寒い水の上で冬を過ごす。飛ぶもの潜るもの姿態は様々であるが、特に水上に浮かんで寝るものを浮寝鳥と言う。群れで渡来はするもののエサ取り羽繕いなど個別の生活作業もある。が常時仲間の気配を察知しながら落こぼれないように暮している。見渡せばみんな同心円の中でそうしている。一人は淋しい。寒くても貧しくても誰かと居ることは心強く嬉しい。他に<蜩や静かにその人を赦す><いち早く座ってをりぬ冷奴><病身の姉は叱れずさくらんぼ>などあり。『黒き帆』(2007)所収。(藤嶋 務)




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