December 04122014

 銀閣も耳の後ろも冬ざるる

                           柳生正名

閣は金閣に比べて地味で渋い味わいの寺である。数年前に雪の京都を訪れたことがあるが、金閣は絢爛、銀閣は雪が暖かく見えるほどひっそりと静まり返ったわび姿だった。「冬ざれ」は冬枯れのさびしく荒涼たるさま、と歳時記にある。冬ざれの中に佇む銀閣は銀沙灘と向月台とそぎ落とした簡素なたたずまいが特徴なだけに、蕭条たるさまに寒さがいっそう伝わってくるように思う。銀閣も庭も冬ざれて、耳の後ろあたりからぞわぞわ来る寒さ、じんじんと足下から全身に伝わってくる寒さを感じているのだろう。底冷えの京都で冬ざれた銀閣を眺めるのは紅葉の季節、桜の季節と違った美しさを感じられていい。そのあとは熱いきつねうどんでも食べたくなるだろうな、きっと。『風媒』(2014)所収。(三宅やよい)




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