November 28112014

 田鳧群れ冠羽を動かさず

                           岩淵喜代子

鳧(タゲリ)は頭に反り返った冠羽(かんむりばね)がある冬鳥で、刈取り後の田や草地に群れて、ミューミューと猫のように細く鳴く。警戒心が強くすぐに飛び立つ習性がある。ふわりふわりとした羽ばたきも特徴である。チドリ科の30cm位の鳥でちょこまかと歩く。顔立ちがすっきりした鳥なので双眼鏡でいくら見ていても飽きない。一群れの田鳧のその見飽きない冠羽を観察していると彼等も息を詰めこちらを眺める。冠羽の動きも止まった。じっと静かに対峙する時が流れてゆく。他に<夏満月島は樹液をしたたらす><誰かれに春䡎の火種掘り出され><僧といふ風のごときを見て炬燵>などあり。『岩淵喜代子句集』(2005)所収。(藤嶋 務)




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