November 27112014

 マフラーのとけて水かげろふの街

                           鴇田智哉

いマフラーがとけることと水かげろうには何ら因果関係はない。しかし掲句のように書かれてみると、摩訶不思議な世界が立ち上がる。水かげろうからマフラーを呼び出す感覚がすばらしい。人の首から解き放たれたマフラーが何本も何本もボウフラのように立ち上がりユラユラ揺れる水かげろうになってしまったようだ。冬の季語としてのマフラーの本意に縛られていてはこのような発想は生まれてこない。この句を知って以来。川沿いに続く白壁に揺れる水かげろうを見るたび、マフラーの乱舞に思えて仕方がない。『凧と円柱』(2014)所収。(三宅やよい)




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