November 22112014

 暮るるよりさきにともれり枯木の町

                           大野林火

木は、すっかり葉が落ちてまるで枯れてしまったように見える木のことで冬木に比べ生命力が感じられないというが、枯木の町、には風が吹き日があたり人の暮らしがある。まだ空に明るさが残っているうちからぽつりぽつりとともる窓明り。ともれり、が読み手の中で灯る時、冬の情感が街を包んでゆく。この句は昭和二十六年の作だが同年、師であった臼田亜浪が亡くなっている。その追悼句四句の中に〈火鉢の手皆かなしみて来し手なり〉があるが、このかなしみもまた静かにそして確かに、悲しみとなり哀しみとなって作者のみならず読み手の中に広がってゆくだろう。『青水輪』(1953)所収。(今井肖子)




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